今年の「こーばへ行こう!」は、さらにパワーアップ!

― 今年の「こーばへ行こう!」はどういう内容になりそうですか。

草場:今年は布施商店街で出張オープンファクトリーを開催します。昨年と違って、工場をまるごとお見せするわけではありませんが、布施商店街のクレアホールを貸し切って、1時間に1回のスケジュールで職人の技術のパフォーマンスをお見せする予定です。プロジェクターを使って、まるで映画を見ているような実演をします。始まったとたん、クレアホールが一瞬にして工場に変わるんです。そこに「溶接」、「タタキ板金」、「ヘラ絞り加工」の3人の職人を呼んで、スポットライトをあてながら、15~20分ほどパフォーマンスをしてもらう予定。クレアホールの中に2日間だけ工場が出現するんです。

あとは、職人と一緒に作るワークショップ。今年は工場5社が集まって、8アイテムを作成します。「金網」、「タタキ板金」、「パイプ加工」、「刷毛・ブラシ」、「金属加工」の職人がお互いタッグを組んで、ペンケースやスタンドボード、黒板など、文具のアイテムを作ります。職人に直々に指導を受けて、一緒に作るワークショップです。昨年は考える時間もなかったけど、今年は色々と違いますよ。

巽室長:東大阪市は、今年も広報活動に尽力できればと思っています。先ほども産官学の話が出ていたかと思いますが、それぞれの強みを生かしながらやっていきたいと考えています。こういう取り組みの主役は、あくまで「産」である企業さんです。我々は持ってるツールを使って、広報活動や情報発信をがんばります。あとは企業さん同士のご紹介などを中心に動いていく予定です。

学生のアイデアと工場の技術がコラボ

草場:昨年と今年の一番違うところは、学生と工場が一緒にイベントを作り上げたところ。今年は近畿大学の文芸学部の学生さんたち26名と「何を作るか」、「ワークショップの商品企画は何がいいか」などを一番最初から話し合って決めました。

― こういう物があったらいいなという学生のアイデアと、工場の技術のコラボレーションですね。

草場:そうですね。学生さんたちも、それぞれ企画を一生懸命考えてくれた。本当に産学官の協力ができました。あとはそれを本番にどう発散するかですね。運営する過程での学生さんと工場との関わりにも、ものすごく意味があったと思います。

西野教授:今年は私のゼミの3・4年生、合わせて26名が参加しています。今回5社のワークショップがありますが、それぞれ4人ずつの班に分けて工場へ行き、工場の社長さんたちと話をしています。さらにこれから、例えば「こーばへ行こう!の写真をインスタにアップしてね!」というような、自分たちの視点で良いと思う活動も取り入れていこうと考えています。

草場:学生さんたちと、昨年もやったリーフレットの手配り広報活動を「今年もやろう!」と話しています。工場の社長さんたちも一緒に、東花園から布施までの近鉄沿線の各駅を制覇しようと。各地域の担当も、すでに振り分けているんですよ。

― 今年は広報活動に学生さんも参加すると言うことですね。

草場:そうです、学生さんたちは広報への意欲がある。一番最初から参加しているので、工場とのコミュニケーションもすごくとれています。近畿大学もひとつの会社として役割分担し、大学の構内やJR長瀬駅、小阪駅を担当してくれます。あとは当日の天気だけですね。

魔の「スマイルカーブ」

― 東大阪市のモノづくりに関するこれからのビジョン、未来について教えてください。

草場:私が社長に就任して、今年で10年目になります。自分の工場も含めて、東大阪の工場を客観的に見て思うことは「会社に良い技術があったとしても、現状、埋もれてしまっている」ということ。会社に良い技術があるというのではなく、会社の中にいい職人がいるという技術がブランディングされておらず、みんなに知られていない。業界の中では有名かも知れないが、職人が活躍する場という所までつながっていないのではないかと思います。

東大阪は、面積の割に工場の密集度が高いんです。でも、工場同士の連携が取れているわけではない。今までの商流は、メーカーがあっての1次下請け、2次下請けという形でした。一般に知られていなくても、その業界で知名度があれば、売ってくれるメーカーの方から勝手に仕事がやってくる時代だった。しかし今、そこが少し崩壊しかけている。日本のメーカーは日本の工場でなくてもいいという時代が、数十年前から来ているんです。

工場自身がメーカーになるとまではいかなくても、「職人をどう全世界に発信していけるのか」が大事になってくる。自分でセルフプロデュースをしたり、何かむずかしいものを作れるということだけではやっていけない。物がキレイだから売れるのではなく、プロダクトのストーリーに感動して売れていくということ。職人自身の「インナーブランディング」が、これから必要になってくるのではないかと思うんです。職人が自分で売り上げを獲得できるような力を付けて、商品企画、製造、販売がトータルにプロデュースできるようになり、全体の経済活性を目指すというのが最終目標だと思っています。

― 職人さん一人一人には、なかなか光があてられていないと。

草場:プロダクトのデザイナーはフィーチャーされるんですけど「それを作ったのは○○製作所ですよ」という紹介はないんですよね。私はデザイナーはもちろん、それを形にした職人も同じくらいすごいと思うんです。でも中々そこには光があたってこなかった。これから、そこにも光をあてるような活動を積極的にしていきたいなと考えています。

巽室長:「スマイルカーブ」を思い出しますね。「スマイルカーブ」とは、製品を作った時の利益配分のグラフの形。グラフにすると設計した人と売る人の部分、両端が上がって笑顔のように見えるのです。草場社長がおっしゃったように、真ん中のこの部分(作った人)が取れていない。光があたっていないし、そこに価値を見いださないので、利益配分がいかない。それが現状ですね。「スマイルカーブ」っていう名前は可愛いんですけど。

草場:グラフ自体は全然可愛くないですね。もっと職人にも光をあてて、カーブをフラットにしていきたいですね。