長年に渡り、工場は「関係者以外立ち入り禁止」が当たり前でした。
でも、市民の方々は関係者ではないのでしょうか。
子供たちは、東大阪の工場で何をつくっているのか理解していません。
世界に誇る技術を保有している工場が、身近にこんなにたくさんあるのに・・・

閉鎖的だった工場を、もっとオープンに。
モノづくりの楽しさを、市民と一緒に。
住民も工業も商業も学校も役所も、境界線を取っ払ってみんなで遊ぼう!

こんな思いから始まったのが「こーばへ行こう!」です。

「モノづくりのまち 東大阪」が、ずっと活気溢れる町であり続けるために。
私たちの企業活動の大きな目的の一つです。

「こーばへ行こう!」2019
実施企業(五十音順)

株式会社 源邑光 北野刃物製作所
共和鋼業 株式会社
株式会社 盛光SCM
株式会社 摂津金属工業所
布施金属工業 株式会社
株式会社 松下工作所

「モノづくりのまち 東大阪」で、普段は入れない工場を特別に開放して、住民のみなさんにモノづくりの楽しさを知っていただくオープンファクトリーイベント「こーばへ行こう!」。2018年10月に盛光SCMと近畿大学、東大阪市による共催で、盛光SCMを会場に開催されました。

2019年は内容がさらにパワーアップ! 9月21日(土)・22日(日)の2日間、布施駅北口交通広場や布施駅北部三番街商店街、クレアホール・ふせを会場として開催されます。ラグビー世界大会開催で盛り上がる東大阪。「こーばへ行こう!」を開催する事により、モノづくりの現場を知ってもらい、工場をもっと身近に感じて欲しい。弊社社長 草場寛子をはじめ、東大阪市経済部モノづくり支援室・巽 佳之室長、近畿大学・西野 昌克教授と「こーばへ行こう!」に関わる3名による座談会を開催し、「こーばへ行こう!」開催の意義やこれからの目標などを語り合いました。

(聞き手:二木繁美)

ラグビー世界大会をきっかけに

― 「こーばへ行こう」プロジェクトを開催することの意味。その始まりや、きっかけになった出来事があれば聞かせてください。

巽室長:今年ラグビー世界大会が東大阪で開催されるにあたり、もっと東大阪も国内外に打って出なくてはならないだろうと考えていました。でも市役所だけではむずかしい。そこで、発信力、総合力がある市内の大学さんということで、近畿大学さんにお願いしました。「モノづくりのまち 東大阪」のブランディングとして、西野教授をはじめとする近畿大学の教授8名と東大阪市、さらに商工会議所の三者が協力してスタートしました。

巽 佳之 氏

東大阪市モノづくり支援室 室長

東大阪市役所にて保健衛生部・環境部などで保健衛生や公害対策を推進、2018年より現職。東大阪市出身。

― 西野教授はお話があったとき、いかがでしたか?

西野教授:最初は本当にまったくゼロからのスタートでした。東大阪市と近畿大学とで、何が出来るかということになりました。我々、近畿大学 文芸学部文化デザイン学科には、デザインの教授もいれば、プロデュース、感性学などさまざまな人間がいます。文化デザイン学科の主任である、岡本清文教授から、総合的なブランディングの為に様々なプロジェクトが生まれていったんです。

当初は「こーばへ行こう!」というネーミングもありませんでした。それでとりあえず、こういう工場で働いてる、工場の中で何をしている、どんな人がいるのかっていうことを、それぞれ可視化しようと考えました。地域の人や市民、関係者に向けて「そういうことをオープンにしようよ」となったんです。

「そういうこと」と言うのは、工場の中を外に向けてどう発信するかということ。東大阪市でも工場見学は実際行われていますし、修学旅行生たちが工場を見に来るっていうプロジェクトもあります。ですので、先ほど巽室長から出てきた『インナーブランディング』に焦点を当てることにしました。

西野 昌克 氏

近畿大学文芸学部文化デザイン学科教授

主にプロデュース学・プロデューサー論・プロジェクト演習で教鞭をふるう。有馬温泉「路地裏アートプロジェクト」など企画多数。大阪市出身。

モノづくりをもっとオープンにしたい!

― どういうきっかけで草場社長にお話されたのですか。

巽室長:草場社長とは以前からお付き合いがありました。こういう取り組みにつきましては、企業のトップの方の想いというのが非常に重要になります。草場社長は、他府県で開催されているオープンファクトリーにすごく刺激を受けておられました。さらにモノづくりへの思いと、それを打ち出したいという思いが非常に強い方。それで、こちらからお声がけさせていただきました。

西野教授:会社の事業内容によっては、秘密事項も含まれたりしますので。「工場をオープンにしてもらえる企業さんは、どこかないか?」という事で、モノづくり支援室に相談をしました。

そこから何社か候補を挙げていただき、その中で草場社長にお会いして、「この方なら積極的に関わっていただけそうだ」と思い、お願いしました。そうやって初めて産官学の連携がとれるようになったのが昨年の7月です。

巽室長:こういう取り組みでは本人のやる気だけではなく、会社の規模や、どのくらい受け入れていただけるのかも大事になるんですが、そういう意味でも草場社長のところはピッタリだと思いました。

「入れ過ぎちゃう?」というくらい詰め込んだ

草場 寛子

株式会社盛光SCM 代表取締役社長

2018年、共同ファウンダーとして第1回「こーばへ行こう!」をスタート。東大阪地区の地場産業振興のため、各種プロジェクトの立ち上げに奔走中。

― 昨年初めて開催された「こーばへ行こう!」ですが、開催後に何か反響などありましたか。

草場:反響というか、まず市民の人達を工場に呼び込むということが創業以来初めての試み。どうやって市民のみなさんを迎え入れたらいいのか、さらにみなさんが果たしてモノづくりに興味があるのか?というところも半信半疑の状態で、近畿大学の先生や学生さんと一緒になって、企画を立ち上げたんです。

イベントには、ラグビーワールドカップを意識して「ラグビー」というキーワードも入れました。外に人工芝をひいて、ちびっ子ラグビーの試合を開催。そして、駐車場に飲食物のマルシェを呼び、工場で作ったテーブルや椅子を並べ、飲食も楽しんでもらいました。2階ではワークショップを開催して、金属加工や組み立てにも触れてもらいました。あとは工場見学ツアーも。企画を盛りだくさんに入れ込んだんです。「入れ過ぎちゃう?」っていうくらい入れましたね。

西野教授:まずはやるからには集客しないと意味がありません。出た企画は「とりあえず全部やってみよう」となりました。うちは学生やゼミ生たちがたくさんいますので、彼らを駆り出してライブ演奏などをしました。ギターと歌、アカペラグループなどです。来ていただいた人たちに色々回っていただけるように、全館、各フロアを使って色々やりましたね。

草場:広報活動も大変でした。盛光SCM自体が、市民の人たちとつながりがありませんでしたから。しかしそこは、市役所の知恵と情報発信力を利用させていただきました。市役所から近隣の小中学生にリーフレットを配布してもらったのです。私たちにはできないことは、市役所の方々の手を借りました。

あとは、今年もやる予定なんですが、うちの社員で広報活動のチームを作りました。開催の2週間前ぐらいから、北巽、布施界隈など、ここから自転車で通える範囲でチームを6つに分け、工場、商店街、飲食店など地元の方々に、口頭で1件ずつ「こーばへ行こう!」のコンセプトを伝え、リーフレットを渡して回る活動をしました。地元の人たちに、きちんと自分たちの口で伝えたいと思ったんです。

その反響か、イベント当日は開催前から入場待ちの列ができました。人を呼ぶために飲食にも力を入れ、駐車場でマルシェを開催。ケバブ、クレープ、タピオカジュースに加え、近畿大学の学生さんにも屋台を出してもらいました。さらに京都からラテアートを呼んだりして。それがすべて14時くらいには完売。丸々としたケバブの肉もお昼過ぎには細~くなって、鉄の棒が見えるんじゃないかってくらいになってましたね。それくらい集客ができたんです。当初300人集まるかなと言っていたのが、結果的には730名ほどの市民の方々と、私たちと取引のない、町工場の社長さんたち100社くらいが来てくださいました。初めての試みにしては、予想外の大反響だったのです。

外に向けての発信を考える

草場:巽室長や西野教授は色々なイベントを見てこられていると思います。私はこういうイベントは初めてなので、おふたりに聞いてみたいのですが、他のイベントと「こーばへ行こう!」の違うところはありますか。

西野教授:私は4年前に近畿大学に赴任しました。最初に関わったのが、東大阪市の「モノづくり支援室」。それまでは市内でアートのプロジェクトなどを手がけていたのですが、モノづくり支援室を通して東大阪に関わる中で、ここではアートを追いかける必要はないと考えるようになりました。

東大阪の特徴は「中小企業、町工場などの地域がもっているコンテンツが生きている」というところです。東大阪市に関わるようになって、それらを外に向けてどう発信すれば良いか考えました。他のイベントにも言えることですが「アートがあるから人が集まるのではなくて、人が集まるからアートが必要なんだ」という風に、私の考えも変わってきたのです。

人が集まるその先には、産業の活性化があります。そのためには今あるもの可視化して、人を出迎える必要がある。盛光SCMさんの工場にも、イベントを通してたくさんの人が来る。普段1人で黙々とお仕事されてる職人さんたちが、たくさんの人に囲まれて見られながら実演する。そういった非日常を「こーばへ行こう!」を通じて、盛光SCMの社員さんたちにも体験してもらったんじゃないかと思いますね。

巽室長:今まであった産学官っていうと、大学さんと企業さんをつないだ製品開発やデザインなどでした。今回は産学官が「力を合わせた」イベントです。こういった現場を使った取り組みは、今回が初めてでした。

― いまお話が出ましたが、産学官がタッグを組むことの意義は何でしょうか。

西野教授:学生たちにとっては、よい経験ができるということではないでしょうか。彼ら自身、子どもの頃から町内会や子供会など、地域の活動に自分が参加する側としての経験はしています。しかし自分たちが大きくなったとき、子どもたちにどう接するか。「こーばへ行こう!」を通じて地域に関わる経験をすることによって、考えが変わっていくと思うんです。

「地域を活性化する」ということがどういう事か、学生たちに直に伝わっていると思います。イベントに関わることによって、最近よくいわれている「社会貢献」や「支援活動」を体感することができる。この2つに関しては、企業も認識を高めていますので、彼らが卒業して社会に出る際に「自分たちがこういうことに関わり、勉強して、身につけてきました」ということが、将来きっと役に立つ。彼らがこういったイベントなどを通して、学生時代に身につけた経験をもとに、社会でも色々な活躍ができるようになると確信しています。